国試まとめ「サルコイドーシス」

1.病態生理
 サルコイドーシスの病因としてアクネ菌病因仮説というものがある。この説では、サルコイドーシスの患者はアクネ菌が肺門リンパ節に不顕性感染しており、それが何らかの誘因(ストレスや感染など)を契機にマクロファージ内で再活性化し増殖する。このとき宿主要因(HLA?細胞免疫の異常?)が重なれば、マクロファージとCD4陽性T細胞の相互の異常活性化によってⅣ型アレルギー機序を介して非乾酪性肉芽腫が形成されるというものである。この病変はリンパ行性に全身に拡がり眼球、神経、心臓、皮膚などに至る。肉芽腫組織からACEとビタミンDが産生されるが、これらは類上皮細胞の分化において何らかの役割を担っていると考えられているが、詳細な機序は不明である。
心臓 Vol. 43 (2011) No. 9 p. 1168-1172
無題


2.症状
①サルコイドーシスの初発症状
サルコイドーシス患者の主訴で多いのは「視力障害(28.8%),咳嗽(18.3%),呼吸苦(12.4%)」である。ただし、無症候性が26%を占め、検診時に発見される場合も多い。また、サルコイドーシスの70%程度が25-40歳で発症するが、高齢発症のサルコイドーシスも存在する(晩期発症型サルコイドース)。この場合、若年発症と比較すると、眼病変が多く、結節性紅斑が少ないことが報告されている。
Eur Respir J. 2008 Fen;31(2):372-9
Medicine(Baltimore). 2012 May;91(3):137-43

②サルコイドーシスの臓器特異的な臨床所見
わが国における組織で確定診断されたSarcoidosis1027例に
ついて臓器障害の頻度を解析した結果は以下のようになる
無題1

 Eur Respir J. 2008 Fen;31(2):372-9

③サルコイドーシスの特徴的な検査所見

無題2

呼吸.1997;16(12):1747-52
Transl Res. 2006 Aug;148(2):87-95
Jpn J Ophthalmol 2007;51:121–126

④サルコイドーシスの診断基準の概略
《組織診断》全身のいずれかの臓器で壊死を伴わない類上皮細胞肉芽照が陽性であり、かつ、既知の原因の肉芽腫および局所サルコイド反応を除外できているもの。
ただし、特徴的な検査所見および全身の器病変を十分検討することが必要である。
《臨床診断》類上皮肉芽腫性病変は証明されていないが、呼吸器、眼、心臓の3臓器中の2臓器以上において本症強く示唆する臨床所見を認め、かつ、特徴的検査所見の5項目中2項以上が陽性のもの。
(参考)サルコイドーシスの診断基準と診断の手引き-2006

3. サルコイドーシスの治療と予後

基本的には、サルコイドーンスの重症度や治療適応は、各種強器への病変の広がりの程度と機能障害度をもとに総合的に判断する必要がある。一方で、サルコイドーシスの代表的な病変として、BHL、肉芽腫性の病変、その瘢痕化による線羅化病変があり、胸部画像所見にて、その所見の組み合わせで、以下のように病期分類を行い、治療の要否や予後を評価することが可能である。

無題3

Eur Respir J. 2001 Sep;32:56s-68s

4.基本的な治療方針を示す。
1)ステージ1-3の無症候性では経過観察、フォローは6か月ごとに行う。
2)ステージ2-3の症候性では、ステロイドPSL20-30mg/dayを3-4週間継続、反応性が良好であれば、徐々に減量し、PSL≦10mg/dayで6-12か月継持、その後終了する。
3)高Ca血症,神経障害,心障害,眼症状を伴う場合はステロイド治療の適応である
4)ステロイド単独で効果不十分の場合ステロイド増量してメトトレキサートorアザチオプリンを併用→これでも効果不十分の場合、TNF-α阻害薬(インフリキンマブ5mg/kg静注0,2,6週、その後4週ごと投与など)
したがって、本症例は眼症状を伴うためステロイド治療を開始することが推奨される。
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国試まとめ「腹痛」

1.腹痛の分類と頻度:鑑別が膨大なため疫学情報で細分化する

①疼痛部位から解剖学的に分類する
無題

J Epidemiol, 1997 ; 7 : 27-32.
†J Crit Care 17:63-67,2002.

②解剖学的な分類で疑ったら次は具体的な疾患を考える

無題2
*1 J Epidemiol, 1997 ; 7 : 27-32.
*2 Tohoku J. Exp. Med., 2014, 233, 9-15
*3 Scand J Gastroenterol.1994;29:715-721
*4 Am J Surg.1976;131:219-23

③年齢を加味する
・20歳以下の腹痛のうち男性の29.6%、女性の24.8%が虫垂炎で20-39歳の女性の腹痛のうち16.2%が婦人科疾患である
Tohoku J. Exp. Med., 2014, 233, 9-15
・30歳未満の女性155名の腹痛のうち、5.8%がFitz-Hugh-Curtis症候群され、右季肋部痛を認めた10名のうち9名がFHCSであった
家庭医療.2005;11:4-9.

2.問診と診察:病態を推測する
1)Onset(発症様式)
「突発」の激しい腹痛は「詰まる、破れる、裂ける、捻れる」疾患を考えるとの原則があるが十分に検討されているわけではない。
ただし、腸閉塞では96.8%が突然発症であるとの報告がある
Diagnosis, treatment and prognosis of small bowel volvulus in adults: A monocentric summaryof a rare small intestinal obstruction. PLoS ONE

2)Quality(性状)
一般的には痛みの性状によって以下のように疾患を推測できるとされているが、十分に検討されているわけではない

無題の画像
(参考)Oxford University Press;2010.p147

≪痛みの性状の問診の有用性の検討≫
・疝痛で最も多いのは大腸がんによる腸閉塞であった。
・動脈瘤、卵巣捻転は「鋭い痛み」である。
・尿管結石、ヘルニア、イレウスは「疝痛」と推測されることが多いが実際には「鋭い痛み」にもなりうる。
・虫垂炎は初期に鈍痛を伴う
MED ARH, 2011 : 65 ( 3 ) : 145-148
・痛みの性状から特定の疾患を予測することはできなかったとの報告もある
J Family Med Prim Care. 2015 Jul-Sep; 4(3): 422–425.

3)Risk(誘発因子)
誘発試験の結果から病態を推測できる

無題3
*Eur J Surg Sci 2010;1(3):77-82

4)Severity(程度)
動脈瘤による腹痛は9/10, 卵巣捻転による腹痛は7.14/10, その他は4-6/10程度の痛みになることが多い
MED ARH, 2011:65 (3):145-148

5)Time Course(経過)
十分に検討されているわけではない
「詰まる、破れる、裂ける、捻れる」疾患は発症24時間に来院することが多い
一方、虫垂炎は発症から2日以上経って来院する場合も少なくない
MED ARH, 2011:65 (3):145-148

6)Associations(随伴症状)
手術治療を要するような緊急疾患を示唆する随伴症状は①嘔吐②頻脈③筋硬直④WBC上昇であった
World J Emerg Surg. 2007; 2: 26.

国試まとめ「虚血性心疾患」(その2)

4.治療:国試的にはMONA→PCIとだけ覚えておけば良いと思われる

【詳細】
1)STEMIに関して
≪初期治療としてのMONA≫
M(モルヒネ):硝酸薬使用後にも胸部症状が持続する場合の塩酸モルヒネ投与することが推奨される。ただし、循環血液量が減少している可能性のある患者には投与すべきでない。
O(酸素):肺うっ血や動脈血酸素飽和度低下(94%未満)を認める患者に対する投与することが推奨される。ただし、酸素化が良好な状態での酸素投与は酸化毒性の可能性もあることは考慮する必要がある
N(ニトログリセリン):硝酸薬は収縮期血圧が90mmHg未満または30mmHg以上の血圧低下を認める場合、右室梗塞を疑う場合は投与を避ける。また、勃起不全治療薬服用後24時間以内の硝酸薬使用は禁忌である。
A(アスピリン):STEMIが疑われる全患者にできるだけ早くアスピリンを投与することが推奨される。アスピリンは単独投与でも死亡率や再梗塞率を減少さ せることがいくつかの臨床研究から明らかにされており、早期に投与するほど死亡率が低下することが示されている
≪MONAに加えて≫
DAPT療法:PCIを予定している患者では、できるだけ早い段階でクロピドグレル投与が推奨される
β遮断薬:禁忌がなく高血圧・頻脈・重篤な心室不整脈などに対する心機能改善のために投与されることがある
≪再灌流療法≫
再灌流療法として経皮的冠インターベンション(primary PCI)を施行する場合は、病院到着から初回バルーン拡張までの時間:Door-to-Balloon Timeを90分以内に短縮することが目標とされる
≪入院後早期の管理≫
24時間以内にACE阻害薬又はARB投与やスタチン投与を開始し外来での2次予防へと繋げる
*1 ST上昇型急性心筋梗塞の診療に関するガイドライン(2013年改訂版)

2)nSTEMIと不安定狭心症に関しての治療方針*2
方針としては、侵襲的治療戦略と保存的治療戦略のいずれかをリスク評価に応じて選択する
リスクが高ければ侵襲的治療を選び、低リスクならば保存的治療という戦略を取ればよい。この2つの戦略を比較研究した臨床試験とメタ解析では、侵襲的治療戦略のほうがよいとする結果と両者に差がないとする結果の両方が存在する。
【治療戦略】
・早期侵襲的治療戦略:明らかな禁忌がある場合以外は入院後早期に冠動脈造影を行い、可能であれば血行再建を行う。
・保存的治療戦略:薬物治療を優先し心筋虚血が再燃した症例や薬物療法下の負荷試験で強陽性の症例のみに限って冠動脈造影を行う
【リスク評価】高リスク群とはトロポニン上昇、ST下降、T波陰転化、慢性腎臓病、糖尿病、左室機能低下(EF<40%)、梗塞後早期狭心症、CABG後、PCI直後などをいう。
【薬物療法】
M:モルヒネはニトログリセリンの舌下錠に反応しない場合に使用してもよい。
O:
A:アスピリンとチエノピリジンの2剤併用抗血小板療法(DAPT)は初期標準治療である
N:
β遮断薬:
スタチン:
ヘパリン:

*2 非ST上昇型急性冠症候群の診療に関するガイドライン(2012年改訂版)
日内会誌 93:263~270,2004

3)労作性狭心症

国試まとめ「虚血性心疾患」(その1)

1.病態生理と分類

無題1
(参考) N Engl J Med. 1992 Jan 23;326(4):242-50.

2.症状と検査
細かなエビデンスは疾患別のまとめに譲る
無題2

最終的には負荷シンチグラフィや冠動脈造影で確定

3.心筋逸脱酵素:心筋が障害されることで血中にもれる酵素。

無題

虚血性の心筋細胞傷害が生じた際の逸脱の順序をイメージすると…
①細胞膜が傷害され細胞膜付近の細胞質に存在する以下のマーカーが血中に遊出する。1-3時間で上昇開始、半日ほどでピーク。
・ミオグロビン:酸素の受け取りを行う酵素。
・心臓型脂肪酸結合蛋白〔H-FABP: heart-type fatty acid-binding protein〕:心臓において遊離脂肪酸の受け取り、細胞内輸送を行う酵素。
②次に心筋線維付近の細胞質に存在するマーカーが血中に遊出する。4-6時間で上昇。半日ほどでピーク。
・CK-MB:クレアチンとATPからクレアチンリン酸とADPが生成する酵素。超短期的なエネルギー代謝を担う。MBは心筋に存在するアイソザイム。
③虚血が高度かつ長時間に及んだ場合には筋原線維が分解されて以下のマーカーが遊出する。3-5時間で上昇。半日ほどでピーク。
・トロポニン T:Iフィラメントの構成要素で、トロポニンIやCとともに複合体を形成し筋収縮に関与している
・ミオシン軽鎖:筋原繊維はIフィラメントとAフィラメントからなるが、ミオシンはAフィラメントを形成している。
④最後に細胞が完全に破壊されると解糖系とTCA回路に関わる酵素が逸脱してくる。6-8時間で上昇。大量に存在するため数日でピーク。
・AST:アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼのことでTCA回路に関与する
・LD:乳酸脱水素酵素のことで解糖系に関与する
ちなみに、この順番を覚えるための「見張っとく気ある?」という有名な語呂合わせがある
(参考)
・診療群別臨床検査のガイドライン 2003
・冠疾患誌 2007; 13: 115-120

無題3

Am J Med. 2003 Aug 15;115(3):185-90

※高感度トロポニンTに関しては(カットオフ値0.014ng/dl)で3時間後に測定することで感度100%まで上昇する。
N Engl J Med. 1997 Dec 4;337(23):1648-53.

国試まとめ「麻疹」

1.病態生理*1,4
麻疹ウイルスは上気道や扁桃から侵入し、リンパ節中でリンパ球や単球に感染する
→リンパ球や単球内で増殖する(潜伏期10日程度)
第一次ウイルス血症:リンパ球や単球に乗り血中へ伝播する
この時期、気道粘膜での滲出性の炎症をきたし、カタル症状(=発熱、鼻汁過多、咳嗽など)を呈する。
第二次ウイルス血症:次に肝臓・脾臓に至り、Mφなどで再び増殖
→全身の臓器(皮膚・神経細胞・肺)へ伝播する
この時期、全身の皮膚では、表皮内の角化細胞への感染とそれに伴う真皮での血管周囲性浮腫をきたす。これが融合傾向を示す紅色斑丘疹(表皮への炎症を伴うので落屑・色素沈着を残すのが特徴)を生む。*2
→またリンパ球に感染するためリンパ球減少をきたし細胞性免疫が一時的に低下するのも特徴である(ツベルクリン反応の陰転化・細菌感染、ウイルス性間質性肺炎の合併)*3
*1 Measles.Lancet. 2017 Jun 30.
*2 昭和医会誌 第58巻 第3号 〔248-255頁,1998〕
*3 ウイルス 45(2),117-123,1995
*4 小児感染免疫 Vol. 20 No. 4 479

2.症状

無題2


JPMA 65: 273; 2015
*J Infect Dev Ctries 2012; 6(3):271-275
※学校保健安全法では第二種の感染症に指定されており「解熱した後三日を経過するまで」を出席停止の期間の基準としている。

3.診断;臨床診断がほとんど
・メーカーによっても異なるだろうが、IgM抗体検査:感度97%以上、特異度97%程度
Braz. J. Microbiol. vol.32 no.1 São Paulo Jan./Mar. 2001
IASR Vol. 36 p. 59-60: 2015年4月号
・Real-time PCR法も存在する

4.治療:基本は対症療法
ただし、
①6~12カ月の幼児で、麻疹およびその合併症で入院する場合
②6カ月以上の幼児でも免疫不全、中等度から重度の低栄養の場合では、ビタミンAの投与によって死亡率が低下する可能性があるため、ビタミンAの投与を考慮してもよい。
Cochrane Database Syst Rev. 2005 Oct 19;(4)
プロフィール

紀藤碧

Author:紀藤碧
北国の医学生(現在5回生)。
たまに、個人的なことを書くかもしれませんが、国家試験のための勉強まとめが中心です。当ブログは、医学的な助言は一切行っておりません。病気の相談や医療的責任は負えません。できるだけ、エビデンスに基づこうとしていますが、所詮は試験対策ですのでご了承ください。

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